横並びで比較する
雪道に強い4WDシステムとは

Issued on Jan. 22, 2017



目次


 1) はじめに
 2) ディファレンシャルの機能
 3) 4輪直結パーマネント4WD
 4) 前後輪直結パーマネント4WD
 5) パートタイム4WD
 6) パッシブオンデマンド4WD
 7) アクティブオンデマンド4WD
  7-1) マツダのi-ACTIVE AWD
  7-2) BMWのxDrive
 8) メカ式フルタイム4WD
  8-1) センターデフ式フルタイム4WD
  8-2) デフロック機構付きセンターデフ式フルタイム4WD
  8-3) ビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WD
  8-4) ランドクルーザ200
  8-3) パジェロ
 9) 電子制御フルタイム4WD
  9-1) スバルのATC-4(アクティブトルクスプリットAWD)
  9-2) スバルのVTD-AWD(可変&不等トルク配分電子制御AWD)
 10) まとめ

1) はじめに


雪道に強いクルマと訊かれれば、誰もが4WD車と答えられるでしょう。

ですが4WDで有名な下のクルマ達の中では、どれが一番雪道に強いか即答できますでしょうか?

車名 4WDシステム

トヨタ・ランドクルーザー
フルタイム・トランスファー
(JF2A)

三菱・パジェロ
スーパーセレクト4WD

ジープ・ラングラー
コマンド・トラック
Command truck 4WD system

BMW X3
xDrive

CX-5
i-ACTIVE AWD

スバル・レガシー・アウトバック
アクティブ・トルク・スプリットAWD
(ACT-4)

スバル・WRX
バリアブル・トルク・ディストリビューション
(VTD-AWD)

スズキ・ジムニー
ドライブ・アクション4×4

それ以前に、そもそもxDriveだの、i-ACTIVE AWDだの、ACT-4だのと言われても、その違いを正確にご存じ方は殆どいらっしゃらないのではないでしょうか?

ならばとネットで調べても、昔から有名だからとか、電子制御だからとか、北米で売れているからとか、フルタイム4WDだからとか、AWDと呼ばれているからとか、果てはアラブの王様が乗っているからと書かれてしまうと、雪道の走破性とどう関係するのだろうと思ってしまいます。

という訳で、ここでは数ある4WD車の駆動システムの違いを分かり易く解説した上で、雪道に強い4WDシステムを論理的にランク付けしてみたいと思います。

従来この様に4WDシステムをハード的に横並びに比較した記事はありませんでしたので、かなりお役に立てるのではないかと確信しております。

なおご存じかどうか不明ですが、4WDシステムについては、(恐らくパテントの関係だと思うのですが)細かく見るとそれこそ4輪駆動車の数ほどの種類があります。

このため本書におきましては、徐々に継ぎ足していく事になるかもしれません事、予めご容赦願います。


2) ディファレンシャルの機能


それでは早速4WDシステムを見ていきたいと思うのですが、その前にどうしても伝えておきたい機構があります。

それがディファレンシャルです。

ディファレンシャルとは、クルマがカーブを曲がる際、左右のタイヤの回転差による駆動系のストレスを軽減する装置なのですが、これが4WDシステムに大きく影響する事から事前にご説明しておきたいと思います。

もしディファレンシャルについて既にご存じでしたら、本項は飛ばして次に進んで頂いて結構です。

さてそのディファレンシャル(Differential)ですが、ネットで調べると日本語で”差動装置”と呼ばれています。

差動装置と聞いてもやはりピンとこないと思いますので、本書がもっと分かり易く呼ばして頂ければ”駆動軸回転差補正装置”です。


マツダ・ロードスターのリアディファレンシャル

この”駆動軸回転差補正装置”は、スポーツカーの様な後輪駆動車でしたら後輪を繋ぐ駆動軸中央のトランスアクスルケース(上図黄色○部)の中に収まっており、内部には下図の様にディファレンシャルギアが詰まっています。


ディファレンシャルギア

ではこれが何のために付いているかについて、以下の図を使ってご説明します。


カーブを曲がると内側のタイヤと外側のタイヤに速度差が生じる

上図の様に、クルマがカーブを曲がろうとすると、内側のタイヤと外側のタイヤで走る距離が異なるので、必然的に左右のタイヤに速度差が生じます。

ただし前輪については、各々独立して回転するので、速度差があっても何の問題もありません。

ところが後輪の場合、左右のタイヤが1本のシャフトに繋がっているため、この速度差により内側のタイヤはゆっくり回転しようとするのに対して、外側のタイヤは早く回転しようとするので、左右のタイヤが路面を擦りながら回転する事になります。

少し極端な言い方をすると、内側の後輪は停止しようとしているのに、外側の後輪は前進(回転)しようとしていると言えば、このギクシャクした状態を分かって頂けるでしょうか。

このため、左右のタイヤを繋ぐシャフト(回転軸)には捩じり方向の力が働くため、最悪の場合シャフトが破損する恐れすらあります。

この左右の速度差を吸収するのが、ディファレンシャルです。

ではこのディファレンシャルが、そのためにどういう動きをするかと言えば、言葉で説明すると非常に難しいので、以下の動画(英語ですが)を眺めて頂ければと思います。


これでディファレンシャルの目的と動きが分かって頂けたと思うのですが、実はこれでメデタシメデタシといかないのです。

この世紀の大発明とも呼べるディファレンシャルによってクルマは滑らかにカーブを曲がれる様になったのですが、一つ大きな弊害が発生します。

それは、万一片方のタイヤがスリップ等で空転したら、空転したタイヤだけが回転し、反対側のタイヤが全く回転しないという現象が発生するのです


例えば上の動画では手前のタイヤが雪でスリップして空転してますが、(発進できない理由はそれだけではなく)こうなると反対側のタイヤは全く回転していないので、スタックから抜け出せないのです。

これがディファレンシャルの弊害なのです。

ではその場合の対策をお教えしておきましょう。

もし1輪が空転したら、その1輪を空転しない様に抑えつけてやれば良いのです。

と言って人が手で押さえるのは危ないので、空転したタイヤの上に人が乗って重くしたり、軽くブレーキを踏んで空転を抑えれば良いのです。(後輪の場合でしたら、軽くサイドブレーキを引きます)

そうすれば、反対側のタイヤに駆動が伝わりますので、うまくいけばスタックから抜け出す事が可能です。

それを知って頂いた上で、今度こそ4WDシステムを一つずつ見ていきましょう。


3) 4輪直結パーマネント4WD


最初にお伝えする4WDシステムは、下図の様に4輪をギアとシャフトで直結した4輪直結パーマネント4WDです。


4輪直結パーマネント4WD

非常に単純な機構ですが、今どきこの様な4WDは、プラモデルか一部のサンドバギーにしか存在しません。


4輪直結4WDを採用したサンドバギー

なぜならば、先ほどお伝えしたディファレンシャルが一切付いていないので、舗装された道路を曲がろうとすると、カーブの度にタイヤがつっかえて、とてもまともに走れないからです。

これをタイトコーナーブレーキング現象と呼び、マニュアル車でしたら簡単にエンストしてしまいます。

ただし雪道などの滑りやすい路面だと、俄然走破性の高い優れたマシンになります。

何故ならば、前記しました様にディファレンシャルが一切ないので、常時4輪に25%ずつの駆動が掛かります。

このため、万一複数のタイヤが空転しても残りのタイヤは動き続けますので、1輪でもグリップしていればスタックしないで済むのです。

また雪道ではタイヤと路面の摩擦が低いので、舗装路の様にタイトコーナーブレーキング現象は発生しません。

という訳で、雪道では一番強い4WDと言えます。

ですので、もし雪道での走破性を5段階でランク付けしたとしたら、これは最高のレベル5としたいと思います。

おっと忘れていました。

ただしこの駆動システムの場合、もう一つ別の重大な欠点があります。

それはブレーキングです。

4輪直結4WDの場合、雪道で急ブレーキを掛けて、万一1輪でもロックさせてしまったら、4輪が同時にロックしてしまう事です。

ご存じの様に万一雪道で4輪がロックすると完全に制御不能に陥いって、クルマはあらぬ方向に突進していきますので、この様なクルマでのブレーキングは十分注意する必要があります。


4) 前後輪直結パーマネント4WD


前述の様に4輪直結4WDは舗装路を走行するのは殆ど不可能ですので、もう少し利便性を高めたのが、前後輪直結4WDです。

これは前述の4輪直結4WDに対して、左右の車軸の間にディファレンシャルを追加したものです。


前後輪直結パーマネント4WD

これが追加された事により、左右輪の駆動力はデファレンシャルによって変化しますが、前後輪の駆動配分は常に50:50になります。

またカーブにおける左右のタイヤの速度差は2個のデファレンシャルで吸収されるのですが、中央のドライブシャフトにはデファレンシャルが無いため、前輪と後輪との速度差によって、依然タイトコーナーブレーキング現象が発生してしまいます。

また雪道においては、もし前輪もしくは後輪の1輪が空転したら片輪は止まってしまいますので、前述の4輪直結4WDより雪道の走破性能は劣る事になります。

そして最悪の場合として、前輪と後輪の1輪が同時に空転したら、クルマは完全に動けなくなってしまいます。

ですので、雪道の走破性はレベル3にしたいと思います。

なぜ2ランク下のレベル3にしたかと言えば、(ご推察通り)後程レベル4が登場するからです。


5) パートタイム4WD


パートタイム4WDとは、前述の前後輪直結パーマネント4WDのセンターシャフトにクラッチを設けたクルマです。


パートタイム4WD

このクラッチを手動で切り替える事によって、2輪駆動になったり前述の前後輪直結4WDになります。

ですので、舗装道路では2輪駆動にする事でタイトコーナーブレーキング現象を防げますし、雪道では前述の通り前後輪直結4WDとなり、ようやく実用的なクルマになったと言えます。

このパートタイム4WDにおいても、いくつかの種類が存在します。

5-1) 元祖パートタイム4WD


この手の4WDは、初期のジープからそれを模した初期のランドクルーザやサファリ、乗用車スタイルのスバルレオーネ、現行のジムニーなどに見られます。


パートタイム4WDのスズキジムニー

なお雪道の走破性については、前後輪直結4WDと同じですので、レベル3と言えます。

5-2) デフロック機構付きパートタイム4WD


ご存じかもしれませんが、ダイハツや軽商用車であるハイゼットカーゴやハイゼットトラック、或いは鈴木の軽商用車であるエブリーやキャリーもこのパートタイム4WDを採用しています。


後輪にデフロック機構を備えたダイハツ・ハイゼット・トラック

おまけに両方のトラックには、後輪にデフロック機構まで設けていますので、滑りやすい雪道に限って言えば、ジムニーよりも雪道の走破性は高いと言えます。

という訳で、後輪にデフロック機構の付いているパートタイム4WD(ハイゼットトラック)の雪道走破性はレベル3.5といしたいと思います。

5-3) 簡易LSD付きパートタイム4WD


またジープのラングラーもコマンド・トラックと呼ばれるパートタイム4WDを採用しているのですが、これにはもう一つのアドバンテージがあります。


それはクライスラーでブレーキ・ロック・ディファレンシャルと呼ぶ機能で、万一車輪が空転したらその車輪にだけブレーキを掛けて、反対側の車輪に駆動力を与える簡易LSD(リミテッド・スリップ・デフ)です。

先ほどお伝えした、軽くブレーキを踏むというのを自動で且つ空転しているタイヤにのみ行っているという訳です。

これによって、4輪直結4WDに近い走破性が期待できますので、これについてはレベル4に格上げしたいと思います。

5-4) 4輪の駆動抵抗について


ところで、パートタイム4WDの場合、2輪駆動にすると、4輪駆動で走行するより駆動抵抗が減って燃費が良くなると言われていますが、パートタイム4WDの図をご覧の通り、2輪駆動になってもタイヤが回れば全てのディファレンシャルもドライブシャフトも回転しますので、駆動抵抗は減りません。

このため、もし2輪駆動時に駆動抵抗を減らしたいのならば、スズキジムニーに付いている様なフリーホイールハブをOFF(FREE)にしなければなりません。


ジムニーの前輪に付いているフリーホイールハブ

このハブをFREEにすれば、タイヤが回っても根本のシャフトは回りません。

なお前後輪直結4WDの場合、全てのタイヤが同じ速度で回転していれば良いのですが、カーブは当然としてタイヤの外形の違いで、少しでも各タイヤの回転速度が異なると、路面との擦れ現象が発生し燃費が悪化する事になります。


6) パッシブオンデマンド4WD


今までに最も採用例が多いであろうと思われる4WDシステムが、ビスカスカップリングを搭載したパッシブオンデマンド4WDです。


FFベースのパッシブオンデマンド4WD

パッシブオンデマンド4WDとは、通常は2輪駆動で、一旦悪路に入って駆動輪が滑りだすと、駆動を後輪にも伝えて4輪駆動になる(50:50まで可変)というものです。

すなわち、通常は2輪駆動で必要なときだけ4輪駆動になるためオンデマンド(要求に応じて)と呼び、更に4輪駆動になるタイミングは駆動輪が滑り出してからのため、パッシブ(受動的)と呼ばれる訳です。

次にビスカスカップリングがどういう働きをするかですが、入力側のシャフトと出力側のシャフトが同じ速度で回っている分には何もしません。


ビスカスカップリング

ですが、万一両者に差が生じたら、遅い方により駆動を伝えるいう働きをします。

このため、もしFFベースのパッシブオンデマンド4WDでしたら、雪道に入って前輪が滑り出したら(後輪より早く回転したら)、このビスカスカップリングは前後輪の回転数が同じになるまで後輪に駆動を掛けるという訳です。

最近では徐々に後述のアクティブオンデマンド4WDに変わってきていますが、コストを掛けられない軽自動車はまだこの形式の4WDシステムを使っています。


パッシブオンデマンド4WDのスズキ・ハスラー

なお一部のネット記事で、本駆動システムで4WDになるのは、前輪が空転してからとありますが、それは間違いで、前輪が少しでも後輪より早く回転すれば後輪に駆動を伝えます。

ですので、カーブにおいても前輪の方が後輪より回転速度は早いので、後輪に駆動を伝えて4WDになっています。

とは言え、前述の前後輪直結4WDと比べれば4WDになるのにタイムラグがあるのは事実ですので、本システムの雪道走破性は、レベル2としたいと思います。

ただしグレードによってはグリップコントロールと呼ぶ空転したタイヤにブレーキを掛けて片方のタイヤに駆動を伝える機能が標準で付きますので、その場合は一気にレベル4まで上げたいと思います。




7) アクティブオンデマンド4WD


次はアクティブオンデマンド4WDです。


アクティブオンデマンド4WD


これは前述のパッシブオンデマンド4WDに付いていたビスカスカップリングの代わりに、より高度な電子制御カップリングを搭載しています。

下の図は1998年に開発され、トヨタ・イプサムやガイヤに搭載されたアクティブトルクコントロール4WDのシステム図です。


トヨタ・イプサムのアクティブトルクコントロール4WDシステム図

これは横置きエンジンの4WDですので、前段の図とは多少配置が異なりますが、電子制御で後輪の駆動力が制御されている事が分かります。


これによって、路面状況や運転状況に応じて、(実際にタイヤが滑り出す前に)2輪駆動(100:0)から前後輪直結4WD(50:50)まで可変できます。

また前述のパッシブオンデマンド4WDは、前後輪のスピード差によってコーナーでも後輪に駆動が掛かりましたが、この場合はFFのままの走行が可能ですので、多少燃費が向上します。

7-1) マツダのi-ACTIVE AWD


マツダのi-ACTIVE AWDがこれに当たります。


i-ACTIVE AWDを採用したCX-5


i-ACTIVE AWDの場合、通常走行は100:0のFF走行(実際には4輪駆動移行時のバックラッシュ除去のため僅かに後輪に駆動を掛けているとの事)ですが、ドライバーの操作と走行状況に応じて前後輪直結4WDの50:50まで可変します。

このため雪道の走破性はレベル3と言いたい所ですが、更なるアドバンテージがあります。

それがTCS(トラクションコントロールシステム)によって、空転した車輪にブレーキを掛けて簡易的なLSD(リミテッド・スリップ・デフ)の働きをさせる機能です。

これによってかなり4輪直結パーマネント4WDに近い走破性が確保できますので、レベル4にしたいと思います。

7-2) BMWのxDrive


BMWの4WDシステムは、以前は遊星歯車式センターデフを使った凝ったフルタイム4WD(前後38:68の基本駆動配分)だったのですが、最新のxDriveになってからはシンプルなアクティブオンデマンド4WDに変更しています。


FRベースのアクティブオンデマンド4WD


コストや燃費、走行性能を考えると、この方式が一番良いとBMWは結論付けたのかもしれません。


xDriveを搭載したBMW X3


そのxDriveは、マツダのi-ACTIVEと同様センターデフの代わりに電子制御カップリング(湿式多板クラッチ)を使っています。

このクラッチは、電気や油圧ではなくモーターで制御されているのですが、基本的な設計思想はi-ACTIVEと全く同じだと考えても良いでしょう。

ただしマツダのFFベースとは異なり、一般道での駆動配分は0:100の後輪駆動で、雪道では50:50の4WDになるという訳です。


xDriveのモーター制御の湿式多板クラッチ


またこれもDTC(ダイナミックトラクションコントロール)と呼ばれるトラクションコントロールシステムによって、空転した車輪にブレーキを掛けて簡易的なLSD(リミテッド・スリップ・デフ)の働きをさせます。

これによって4輪直結パーマネント4WDに近い走破性が確保できますので、雪道の走破性はレベル4にしたいと思います。


8. メカ式フルタイム4WD


お待たせしました。

次はいよいよフルタイム4WDです。

フルタイム4WDとは、常時4輪に駆動を伝えて走る駆動システムを指します。

ですので普段の乾いた舗装路でも4輪で走る事になります。

これも星の数ほどとは言いませんが、かなりの種類のシステムが存在します。

という訳で、前輪と後輪への駆動配分を、メカ的に行うものと電気的に行うものに分けてご紹介したいと思います。

先ずはメカ式フルタイム4WDからです。

8-1) センターデフ式フルタイム4WD


一番シンプルなフルタイム4WDはセンターデフ式4WDです。


センターデフ式フルタイム4WD

これは前述の電子制御カップリングの代わりにディファレンシャル(センターデフ)を搭載しています。

これによって舗装された道路を4輪駆動で旋回しても、前後輪のタイヤの回転速度の違いを吸収してくれますので、タイトコーナーブレーキング現象が発生なく曲がれる様になります。

このため常時4輪駆動での走行、すなわちフルタイム4WDが可能となります。

ただし雪道においては、ディファレンシャルが3個もあるので、万一1輪でも空転すると残りの3輪は全て止まってしまいます。

ですので雪道での走破性能からすると、4WDでありながら、いざとなると2輪駆動車と同じ様にスタックしてしまう恐れがあります。

このため、このタイプの4WDシステムを採用しているクルマは現実的には存在しません。

また雪道の走破性についても、一番下のレベル1にしておきたいと思います。


8-2) デフロック機構付きセンターデフ式フルタイム4WD


ただしこのセンターデフにデフロック機構が付いていれば話は別です。


デフロック機構付きセンターデフ式フルタイム4WD

これでしたら前述の前後直結4WDと同じですので、雪道の走破性はレベル3になります。

このデフロック機構が付いたセンターデフ式フルタイム4WDは、無いだろうとおもわれるかもしれませんが、実は存在しているのです。


センターデフ式フルタイム4WDのダイハツ・ビーゴ

それがダイハツのビーゴ(及びトヨタのラッシュ)です。


トヨタライトエーストラックのフルタイム4WDシステム図

雪道でしたら、この様の単純な4WDシステムでも十分だと言えます。

さらにメーカーオプションですが、VSC(横滑り防止装置)+TRC(トラクションコントロール)を装着すれば簡易LSDになりますので、レベル4になります。

またVSC&TRCとの同時装着はできませんが、リアデフにはLSDも装着できますし、ボディ構造にはビルトインラダーフレーム式モノコックを採用していますので、見かけはそれほどではありませんが、はっきり言ってジムニーより悪路には強いと言えます。


フルタイム4WDのトヨタ・ライトエース・トラック

ついでに言っておきますと、駆動系を共通にしているライトエース・トラックもデフロック機構が付いたセンターデフ式フルタイム4WDを採用しています。


8-3) ビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WD


前述のセンターデフ式4WDにビスカスLSDを組み合わせたのが、このビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WDです。


ビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WD

この場合、センターデフのお蔭で舗装道路では前後の駆動力配分は50:50ですが、一度前輪もしくは後輪が滑ると0:100~100:0に変化します。


ビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WDのフォレスター(MT)

この方式の4WDは、純粋に機械的でシンプルな構造と、常時4輪に駆動が掛かっている事から、スバルのWRX STIを除く全MT車に使われています。


スバルのMT車におけるビスカスLSD付きセンターデフ(赤丸部分)

ただし、この場合も2輪が空転すると進めなくなるので、前後直結4WDと同じく、雪道での走破性はレベル3にしておきたいと思います。

ただし4輪のブレーキを制御するX-MODEが搭載されていれば、MTながら簡易LSDの機能が追加されますので、その場合レベル4になります。


8-4) ランドクルーザ200


次は、4輪駆動の雄とも言えるランドクルーザ200です。


ランドクルーザ200のフルタイム4WDシステムには、遊星歯車とデフロック機構付きトルセンLSDが採用されています。


ランドクルーザ200のフルタイム4WD

これにより、通常走行では駆動力配分を前後40:60として、多少FR寄りのオーバーステア傾向にしている様です。


ランドクルーザの4WDトランスミッション

またネットで調べると、コーナリング中など旋回加速時などは前後30:70とトルクを更に後輪寄りに配分するとあり、かなりフロントの負荷を減らす(フロントタイヤの摩耗を減らす)設定になっています。

なおこれもデフロックによって50:50の駆動配分が可能ですし、空転したタイヤへブレーキを掛ける事で前後輪のLSDもどきも可能ですので、走破性はレベル4と言えます。


8-5) パジェロ


次は数十年前のクロカンブーム時代に、一世を風靡した三菱のパジェロです。


パジェロの4WDシステムであるスーパーセレクト4WDも、ランドクルーザ以上に機能は盛り沢山です。


パジェロのスーパーセレクト4WD

一般路では0:100の後輪駆動、道や天候が悪化してきたらセンターデフを介したフルタイム4WD、さらに悪路ではセンターデフロックによる前後輪直結4WDが選択できます。

フルタイム4WDは、ビスカスLSDを介して行っており、遊星歯車によって駆動配分は33:67でランドクルーザ以上に後輪寄りにしています。

更に図にはありませんが、フロントにはフリーホイールハブも付いていますので、2輪駆動時は完全にフロントシャフトの駆動(抵抗)を絶つ事によって燃費向上が図れます。

なおこれも前後輪直結4WDが可能で、さらに空転したタイヤへブレーキを掛ける簡易的なフロントとリアのLSDも可能ですので、走破性はレベル4と言えます。


9. 電子制御フルタイム4WD


それでは最後に電子制御式のフルタイム4WDです。

9-1) スバルのATC-4(アクティブトルクスプリットAWD)


先ずは、スバルのAT搭載車に最も多く採用されているATC-4(アクティブ・トルク・スプリットAWD)です。


スバルのアクティブトルクスプリットAWD(ATC-4)

ATC-4の場合、通常は前後の重量比と同じ60:40の駆動配分として、路面や走行状態に応じて100:0の前輪駆動から50:50の4輪駆動までと、4種類のスバルAWDの中ではもっとも駆動配分比率の変動量が多いシステムです。

以前はNAエンジン+AT専用のシステムだったのですが、最近ではターボエンジン+ATにも搭載される様になっています。

ですので雪道での走破性は、前後輪直結4WDと同じレベル3なのですが、空転する車輪にブレーキを掛けて簡易LSDの機能(X-MODE)を有していますので、レベル4に格上げです。


9-2) スバルのバリアブル・トルク・ディストリビューション(VTD-AWD)


異色なのは、スバルのハイパフォーマンスATに搭載されているVTD-AWD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)と呼ばれる可変&不等トルク配分電子制御AWDです。

これは現在、スバルのレヴォーグ(2.0L車)とWRX S4にしか搭載されていません。


スバルレヴォーグ

先にご紹介したATC-4は、通常の駆動力配分は60:40と前輪寄りの安定志向ですが、これでしたらFF同様にアンダーステアー傾向になります。


スバルのバリアブル・トルク・ディストリビューション(VTD-AWD)

これに対して、センターデフに複合遊星歯車(プラネタリーギヤ)と電子制御LSD(油圧多板クラッチ)を用い、前後輪の基本となる駆動配分を45:55にしたのがVTD-AWDです。

これによって、クルマの旋回性能がFRの様にオーバーステア気味になり、回頭性と操縦性能を高めています。

なお雪道の走破性に関しては、X-MODEを搭載していますのでレベル4にしたいと思います。


11. まとめ


上記をまとめると、以下の様になります。

雪道走破
レベル
4WDシステム 理由
5 4輪直結パーマネント4WD 常に4輪に駆動が掛かる。
4 アクティブオンデマンド4WD
フルタイム4WD
空転する車輪があっても、他に駆動力が掛かる。
3 前後輪直結パーマネント4WD
パートタイム4WD
2輪が空転すると進めない。
2 パッシブオンデマンド4WD 上記と同じだが、4WD移行に多少タイムラグがある。
1 ノーマルセンターデフ式4WD 1輪でも空転すると進めない。

また、はじめにに登場したクルマの走破レベルは以下の通りです。


トヨタ・ランドクルーザー
フルタイム・トランスファーJF2A レベル4

三菱・パジェロ
オール・ホイール・コントロール レベル4

ジープ・ラングラー2020
コマンド・トラック レベル4

BMW X3 1840
xDrive レベル4

CX-5
i-ACTIVE AWD レベル4

スバル・レガシー・アウトバック
アクティブ・トルク・スプリットAWD
(ACT-4)
レベル4

スバル・WRX
バリアブル・トルク・ディストリビューション
(VTD-AWD)
レベル4

スズキ・ジムニー
ドライブ・アクション4×4 レベル3

結論です。

今時の4WDでしたら、殆どがDSC(ダイナミックスタビリティコントロール)の様な空転するタイヤにブレーキを掛けて、反対側のタイヤに駆動を伝える簡易的なLSDの機能を有していますので、レベル4の走破性は確保していると言えます。

またもしこれから雪道に強い4輪駆動車を購入しようと思われている方は、是非DSCの機能を持っているかどうか調べる事をお勧めします。




雪道に強い4WDシステムとは

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7. まとめ

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9. 雪道でお勧めのクルマ





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