秘密はフライパンだった
ホットケーキを綺麗に焼く方法
その1:なぜフライパンの材質によって焼け具合が異なるのか?


目次


 1. はじめに
 2. 疑問

  2-1. なぜ濡れ布巾で冷やすのか?
  2-2. なぜフライパンで焼き上がりが異なるのか?
 3. 調査結果
  3-1. 結論
  3-2. フライパンの表面温度
 4. 考察
  4-1. 熱伝導率
  4-2. 比熱
  4-3. 厚み
  4-4. 重さ
  4-5. 考察のまとめ
 5. まとめ
 6. 新たな疑問

  6-1. 火力をもっと弱めたらどうなるか?
  6-2. 薄い鉄製フライパンを使ったらどうなるか?

1. はじめに


ホットケーキを綺麗においしく焼く方法は?と訊かれれば、100人中100人が以下の様な事を言われるのでしょう。

フライパンは一度熱してから、濡れ布巾で冷やす。

ところがどっこい。

サーモビュアで調べてみると、なんとフライパン自体に思わぬ秘密が隠されていました。

恐らく世界中探しても、本書以外には一切触れらていない事だと思いますので、興味のある方は是非お読み下さい。


2. 疑問



2-1. なぜ濡れ布巾で冷やすのか?


上記については、自称料理専門家のHP、或いはホットケーキの箱等にも書いてあるのですが、私にはどうしても腑に落ちない事がありました。

       


折角熱くなったフライパンを、何故冷ます必要があるのだろう?

それならば、フライパンが熱くなる前に、ホットケーキを作り始めれば良いではないか?と

2-2. なぜフライパンで焼き上がりが異なるのか?


話が前後しますが、私の場合も(皆さんと同じ様に)数カ月に1度無性にホットケーキが食べたくなり、家族がまだ寝てる日曜日の朝に一人でこっそりホットケーキを作る事があります。

その際、1個1個作るのもまどろこっしいので、自宅にある二つのフライパンを使って2個同時に作ります。

そのフライパンとは以下の2種類で、一つは鉄製、もう一つはアルミ製(実はこれを書くまで鉄だと思っていました)です。


鉄製(直径24cm/厚み2mm/重さ1kg)  アルミ製(直径26cm/厚み2.7mm/重さ0.6kg)


ところがこの二つのフライパンを使ってホットケーキを作ると、上手く焼ける時と、そうでない時があるのです。

当初は多分火加減のせいなのだろうなと思い、特段気にも止めていませんでした。

しかしその後何度か作っていくうちに、成功作と失敗作が交互に出来上がっていくのに気付きました。

ただしそれは、これはコンロの違い(火力)の違いかなのだろうと思っていました。

なぜならば、我が家のコンロは下の写真の様に、右と左で大きさが若干異なるからです。


右のコンロの方が大きい我が家のガスコンロ


ところが、その後更に何年か経ったのち、ようやくその違いはコンロの違いではなくフライパンに起因する事に気が付きました。

具体的には、鉄製の重いフライパンは、少しでも油断すると直ぐに黒く焦げてしまうのに対して、アルミのフライパンはたいして気を使う事もなく、鼻歌交じりで上手く焼けるのです。


鉄製フライパン(左)は何故か焦げる


上の写真は少々オーバーに撮られている様に思われるかもしれませんが、この傾向は乗せるコンロを左右変更しても変わりません。


コンロを換えても鉄製フライパン(右)の方が焦げる


何故だ?

とは言え、素人に原因が掴める筈もないので、暫くは諦めていました。

しかしながらどうしてもその原因が知りたくて、ついに数百万円もする高価なサーモグラフィーを手に入れて、その謎に迫ってみました。

     


と言いながら、調べる前はそう簡単には原因は突き止められないと思っていたのですが、アッと言う間にとんでもない事が分かりましたので、ここでご紹介したいと思います。

これを読むと、料理本やら料理番組やらネット情報は、間違いだらけだとは言わないまでも、いかに非科学的かを痛感する事になるかもしれません。


3. 調査結果


3-1. 結論


時間の無い方のために、先に結論を言ってしまいましょう。

アルミのフライパンは、熱が早く全面に行き渡りどんどん放熱する事から、高温になり難いので、ホットケーキが綺麗に焼けるのです。

それに対して、鉄のフライパンはアルミに比べて3倍も熱伝導性が悪く、火の当たっている箇所のみがどんどん高温になる事から焦げ易いのです。


ですので、家庭用コンロでホットケーキを綺麗に焼くには、温度の上がり難いアルミ製のフライパンを使う、ただそれだけの事です。

アルミ製のフライパンを使う限り、わざわざ濡れ布巾で冷やす必要は一切ありません。

ましてや何の根拠もないデタラメ記事を集めただけのキュレーションサイトに書かれている様な、生地は混ぜ過ぎるなとか、中にマヨネーズを入れろとか、生地を流す高さは20~30センチなどと聞くと、片腹が痛くなります。


3-2. フライパンの表面温度


お待たせしました。

それではいよいよ、両フライパンの表面温度をサーモグラフィーを使って比べてみましょう。

正直私もこれほど歴然と差があるとは思いませんでした。

先ずいつもの様に二つのフライパンを使って、ほぼ同時にホットケーキを焼き始めます。

もちろんフライパンを暖めてから濡れ布巾で冷ますという、無駄な事は一切やっていません。

そして表面に泡が表れて、ホットケーキを反転した直後の写真が以下です。


アルミ製フライパン 鉄製フライパン


形が悪いのお許し頂くとして、既にお伝えしている様に、鉄製フライパン(右)で焼いた方が、既に焦げ気味なのが分かります。

ついでに言っておきますと、ホットケーキを丸くするには、生地を少し固めにして、フライパンを水平に置くだけの事です。

ついでに言えば、フライパンの底が水平ではなく、中央が丸く凹(へこ)んでいる物を使えば、目を閉じていても丸くなります。

ちなみに我が家のホットケーキが歪(いびつ)なのは、フライパンの底が変形しているからです。

話が脱線してしまいましたが、それではいよいよ、その二つのフライパンをサーモグラフィーで撮った写真を見てみましょう

 
アルミ製フライパン 鉄製フライパン


いかがでしょうか?

画像の細かい説明をしないでも、一目瞭然でしょう。

明らかに鉄製フライパンの温度が、アルミ製に比べて高いのです。

念のためにこの画像について説明すると、上の写真の青色部分が一番温度が低く(10℃)、温度が高くなるにつれて黄緑→黄色→赤色→ピンク(278℃)と変化していきます。

ですので、アルミ製フライパンの場合、ホットケーキの周囲は黄緑(150℃前後)であるのに対して、鉄製フライパンの場合、それよりもっと温度の高い赤色(250℃前後)になっています。

ただしこれでは、下のコンロの差があるかもしれないので、ホットケーキを除いた後、フライパンを左右で入れ替えてみたいと思います。


鉄製      アルミ製


するとどうでしょう、これでも同じ様に鉄製の方が、フライパン中央部の温度が高くなる事が分かります。

ちなみにこのまま火の着いたコンロに放置すると、鉄製のフライパンの中央が赤からピンクに変わって煙が出始めるのに対して、アルミのフライパンは殆ど変化はありませんでした。

簡単な事でした。

鉄製フライパンの方が温度がどんどん高くなるから、焦げ易いのです。

では、何故鉄製フライパンの温度が高くなるのでしょう?




4. 考察


それでは何故、鉄製のフライパン中央部が熱くなるのか考えてみましょう。

要因としては以下の4つが考えられます。

①熱伝導率
②比熱
③厚み
④重さ

これら4点を小学生にも分かる様に解説したいと思いますので、少々お付き合い頂ければと思いますが、興味が無ければ次(5. ここまでのまとめ)に飛んで頂いて結構です。

4-1. 熱伝導率


熱伝導率とは、長さ1mの金属に1℃の温度差を得たえた場合、どれくらい早く熱が伝わるかを表す指標です。

調べてみると鉄の熱伝導率は84なのに対して、アルミのそれは236と約3倍も高いのです。

という事は、同じ厚みの鉄とアルミの板があるとして、左端に+1℃の温度を与えたとしたら、アルミの方が3倍の熱を流す事ができるという訳です。


もっと具体的に言えば、板の左側を1℃上げると、鉄板は84Calの熱を流すのに対して、アルミは236Calの熱(エネルギー)を流すという訳です。


4-2. 比熱


アルミの方が熱を3倍伝えやすい事が分かった所で、今度は比熱について考えてみましょう。

比熱とは、物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量の事で、物体の熱し易さを示します。

例えば水と砂を比べると、日に当たると砂の方が早く熱くなるものの、日が沈むと水より早く冷めるのも感覚的に分かると思います。

ちなみに砂の比熱は0.23に対して、水の比熱は1.0ですから、砂の方が4倍熱し易いといえます。

この比熱を鉄とアルミで比べると、鉄が0.1アルミが0.2なので、同じ重さの鉄とアルミに同じ熱を加えれば鉄の方が2倍温度が高くなります。

ですので、同じ大きさの鉄板とアルミ板を同じ様にローソクで暖めると、鉄板は2℃上がっても、アルミ板は半分の1℃しか上がらない事になります。


ですので、もし同じ様に1℃温度を上げるとなったら、アルミ板は2本のローソクが必要になります。


すなわち、アルミのフライパンは元々鉄と比べて温度が2倍上がり難いのです。(知ってましたか?)

さてこれを、前段の熱伝導率に当てはめて考えてみましょう。

鉄板の左右に1℃の温度差を加えるためには、アルミは鉄に対して2倍のローソクが必要になります。


さらにローソクの本数を鉄とアルミで同じにすると、以下の様になります。


ここまでは宜しいでしょうか?

すなわち同じ熱を鉄とアルミに加えた場合、アルミの方が1.4倍(=118÷84)早く熱が伝わるという事になります。

ですので、もし同じ厚みの鉄とアルミのフライパンがあったとすると、火力が同じであれば鉄の方が2倍も温度が高くなり、熱はアルミの方が1.4倍も早く伝わるという事です


4-3. 厚み


今までは鉄とアルミは同じ厚みで考えていましたが、アルミは鉄より1/3軽いものの、剛度も1/3のため、通常アルミのフライパンの方が鉄製より厚いのが一般的です。

我が家のフライパンの場合、鉄製フライパンの厚みは2.0mmで、アルミ製は2.7mmあります。

としますと、アルミの方が1.35倍(=2.7÷2)厚い分熱の通り道が広くなり、1.35倍早く熱を伝える事になります。

これを図示すると、以下の様になります。


すなわち、前述の熱伝導率と比熱と更には厚みも考慮して、同じ熱を我が家の鉄とアルミのフライパンに加えた場合、アルミの方が1.9倍(=159÷84)早く熱が伝わるという事になります。


4-4. 重さ


最後に重さです。

我が家のフライパンの場合、鉄のフライパンの重さが1kgでアルミ製フライパンが0.6kgですので、もし比熱が同じであれば、同じ熱量を加えた場合、アルミのフライパンの方が1.7倍(=1÷0.6)温度が上がり易くなります。

一方先ほどお伝えしました様に、鉄の比熱はアルミの2倍ですので、同じ重さであれば、鉄のフライパンの方が2倍温度が高くなります。

という事は結局の所、鉄のフライパンの方がアルミより1.2倍(=2÷1.7)温度が高くなるという訳です。


4-5. 考察のまとめ


話が長くなってしまいましたが、まとめるとこういう事です。

同じ厚みのフライパンの場合、

①鉄のフライパンを熱すると、2倍アルミより温度が高くなる。
②アルミのフライパンが熱を伝える速度は、鉄より3倍早い。

我が家のフライパンの場合ですと、

①鉄のフライパンを熱すると、1.2倍アルミより温度が高くなる。
②アルミのフライパンが熱を伝える速度は、鉄より1.9倍早い。

このため、我が家の鉄のフライパンでも、アルミと比べると中央部の温度がどんどん高くなる事を示しています。

これに対してアルミのフライパンは鉄より温度が上がり難い上に、鉄より早く周囲(フライパン全体)に熱が伝わるために、放熱性も鉄より大きくなり結果的に低い温度で安定するという訳です。

何てコッタイ。

ちょっと考えれば、分かりそうな事だったのに。


5. まとめ


さてまとめです。

ホットケーキをガスコンロで焼くのならば、断然アルミ製フライパンがお勧めです。

       


アルミのフライパンを使えば、火力を微調整できないガスコンロにおいてもホットケーキが焦げる300℃近い高温に達しないため、一度熱してから濡れ布巾で冷やすという、どうみても無駄な儀式は不要と言って良いでしょう。

6. 新たな疑問


通常でしたらこれで一件落着になるのかもしれませんが、幣サイトは違います。

ここまで分かってくると、新たな疑問が頭をもたげてきます。

6-1. 火力をもっと弱めたらどうなるか?


例えば鉄のフライパンですが、少ない火力で高温になるという事は、むしろエネルギー効率的には良い事です。

ですので、もっと少ない火力であれば、ホットケーキも綺麗に焼ける筈です。

しかしながら何方も経験されている様に、一般のコンロではこれ以上火力を絞ると、炎が消えてしまいます。

という訳で、次回は鉄製のフライパン+更に小さなコンロの組み合わせでホットケーキを作ったらどうなるかに挑戦してみたいと思います。

6-2. 薄い鉄製フライパンを使ったらどうなるか?


また今回は厚さ2mmの鉄製フライパンを使いましたが、次回は厚さ1.2mmのフライパンではどうなるでしょう。

予想としては、当然ながら少ない火力で早く高温になるので、エネルギー効率から言えば理想的だと思うのですがどうでしょうか?

という訳で、またいつか覗いてみて頂ければ幸甚です。




その1:フライパンの材質の違い

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その2:小さなバーナーでは?





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