テスラの株価が大暴落するかもしれない
日産ノートe-POWERの快挙

2017/06



目次


はじめに
シリーズハイブリッド
シリーズハイブリッドの特徴
パッケージング
e-POWERユニット開発開始時期
e-POWERユニットの難易度
待たれていたe-POWERユニット
価格
ワンペダルドライブ
バッテリーが一杯になったら回生ブレーキは働くのか?
時速60kmが決めての燃費性能
天下無敵の動力性能
e-POWERの欠点?
本当の欠点
電気自動車のまったく新しいカタチ
静粛性
インパクト
まとめ


はじめに


日産自動車が久々の快挙を成し遂げました。

ご存じの方も多いと思いますが、日産のノートが昨年(2016年)11月に国内登録台数1位を獲得したのです。(その後2017年1月と3月も首位)


この理由は新たに追加されたe-POWERユニットのお蔭なのは間違いありませんが、これはもう驚きとか、びっくり仰天とか、晴天の霹靂を通り越して、脅威としか言いようがありません。

e-POWERの何が一体脅威なのか、本書独自の視点で述べたいと思います。


シリーズハイブリッド


先ずe-POWERにおける最大の脅威は、その潔さです。

何が潔いかと言えば、発電用にエンジンを搭載したものの、エンジンとタイヤは完全に切り離し、常にモーターだけで駆動するシリーズハイブリッドにした事です。

ご存じの様にハイブリッド車には、シリーズ方式とパラレル方式があり、従来はパラレル方式一辺倒でした。


左が電気自動車、中央がシリーズ方式、右がパラレル方式

この場合、シリーズ方式と同様にエンジンとモーターの両方を搭載していますが、タイヤをモーターとエンジンの両方、もしくはいずれか一方で駆動します。

一部の記事では、三菱のアウトランダー PHEVやホンダのアコード ハイブリッドはシリーズハイブリッドだとの記載がありますが、いずれも高速走行ではエンジンがタイヤを直接回しますので構造上はパラレルハイブリッドです。

生憎全世界のクルマを調べた訳ではありませんが、量産車でシリーズ方式のクルマはノートe-POWERが初めてではないでしょうか。

ではなぜ今までこの様なシリーズハイブリッド車がなったのでしょうか?

それを知るとe-POWERの本質が分かってきます。


シリーズハイブリッドの特徴


なぜ今までにシリーズ方式が無かったのか?

その理由は至極簡単です。

ストップアンドゴーを繰り返す低速走行では、電動モーターによる走行は減速時にエネルギーを回収できる事もあり非常にエネルギー効率が良いのですが、負荷の大きい高速走行になると途端にエネルギー効率が悪化するからのです。

このため賢明な技術者であれば、低速走行時はモーターで、高速走行はエンジンでタイヤを駆動しようと思うのが至極当然の事だからです。

その常識に逆らって、高速走行でもモーターで駆動させようと割り切った所が、とにかく画期的としか言いようがありません。

これはやはり、電気自動車であるリーフの経験が強く影響しているのは間違いないでしょう。

すなわち、リーフの最大の欠点である、走行距離と充電の問題を解決すれば、モーターのみの駆動でも市場性は十分あると判断できたのでしょう。

ただし、そう思ってもそれを実現するのは容易な事ではありません。

ですがノート e-POWERはそれをやってのけたのです。


パッケージング


真っ先に思い付くのが、そのパッケージングです。

ノート e-POWERの何が凄いかと言えば、コンパクトカーにリーフのモーターとインバーター、それにマーチやノートと同じ1200ccのエンジンと、更に走行用バッテリーとガソリンタンクを積んだ事です。


確かにプリウス等のパラレルハイブリッド車にもモーターと走行用バッテリーを搭載していますが、大きさ(容量)が全く事なります。

詳細は後程お伝えするとして、先ずは下の写真をじっくり見て下さい。


リーフ(後記型)のエンジンルーム

これはリーフのエンジンルームですが、電気自動車であっても、インバーターやモーターや鉛電池が鎮座しており、どうみても隙間がある感じではありません。

それでは次にガソリンエンジン(HR12DE)を搭載したノートのエンジンルームを見て下さい。


ガソリンエンジン(HR12DE)を搭載したノートのエンジンルーム

これも3気筒自然吸気の1200ccのエンジンながら、補機類を入れるとぎっしり詰まっています。

ところが、下にあるノートe-POWERのエンジンルームには、先ほどお見せしたリーフのインバーターとモーター、そしてノートのガソリンエンジン(HR12DE)が収まっているのです。


ノートe-Powerのエンジンルーム

これはかなり驚きではないでしょうか?


ノートのエンジンルームに収められたe-POWERユニット(ただしバッテリーは前席下)

さらに感心するのは、これらのインバーターもモーターもエンジンも、ノートe-POWERの専用設計ではなく全て流用品という事です。

専用設計ならば多少の形状変更も可能でしょうが、流用となるとそれもできません。

確かにトヨタのアクアも1500㏄のエンジンとモーター等を一式搭載しているのですが、アクアの場合モーターはエンジンの補助的な存在ですので、出力は45kWほどで、バッテリー容量も0.94kWhしかありません。


トヨタ・アクア

それに対してノートe-POWERのモーター出力は80kWもあり、バッテリー容量も1.5kWhですので、モーターで1.8倍、バッテリーで1.5倍の性能があるのです。

またアクアはヴィッツやラクティスと同じプラットフォームを流用しているものの専用ボディーですので、エンジンルームも多少削ったり広げたりは可能です。


トヨタ・ヴィッツ          トヨタ・ラクティス

一方ノートe-POWERのボディーは完全流用でエンジンルームの加工修正など殆ど不可能です。

日産の開発陣は恐ろしく困難な事をやってのけたものです。

と、感心していたのですが、調べていくと実はもっと奥深い日産の遠慮深謀が見えてくる事になります。


e-POWERユニット開発開始時期


ここで一つ、おやっと思った事があります。

何かと言えば、(当たり前の話ですが)万一e-POWERユニットがノートのエンジンルームより小さくできなければ、決して搭載する事はできないという事です。

先ほどまでは、現行の車両によくこれだけの物を詰め込んだなと感心していたのですが、よくよく考えてみれば、大企業がそんな日和見的な対応を行なう訳がありません。

すなわち、ノートのマイナーチェンジを機会に(エンジンルーム収まるかどうか分からない)シリアルハイブリッドを作ってみようと思い立った訳ではなく、このe-POWERユニットは現行ノートに確実に収まる様に、ノートの設計段階から3サイズは既に決まっていたと考えるのが妥当でしょう。

となると、リーフが発表されたのが2009年11月のモーターショーで、発売が翌2010年の12月です。

そして、現行ノートの発表が2012年7月で、発売が同2012年9月です。


という事は、現行ノートの開発開始が発売開始3年前の2009年ごろだとすると、リーフが発表された2009年以前からe-POWERユニットの開発は進められていて、2009年頃には3サイズがほぼ固まっていたという事になります。

傍から見ると、ノートのマイナーチェンジで既存のモーターとエンジンを組み合わせて搭載しただけの様に思えますが、実は今から10年近く前からe-POWERユニットは既に計画されていた事になります

とすると、前段で述べたシリーズハイブリッドを選択した大英断は、ノート発売のもっと前、何とリーフの発売前に既に下されていた事になります。

もしそうならば大した先見性だと言うより、むしろe-POWERが本命で、リーフはそのための露払い役だったのかもしれません。

すなわち今にしてみれば、日産にとって電気自動車の本命は、リーフではなくe-POWERだという事になります。

当然ながらいきなりハードルの高いe-POWERを作るより、先ずは構造の簡単な電気自動車から始めた方がリスクは小さくなりますし、e-POWERの発売前に電気自動車における貴重な市場情報が入手でき対策を打つ余裕もできます。


e-POWERユニットの難易度


今まではe-POWERユニットのパッケージングの問題だけから開発開始時期を推測してきましたが、そもそも世界初のシリーズハイブリッドを作ろうした場合の難易度はどれくらいなのでしょうか?

モーターとインバーターはリーフと同じ物を使うとしても、それに電気を供給して日本中を過不足なく走れる発電機とエンジンとバッテリーの最適な容量を導き出すのは、素人が考えるだけでもかなり難しそうです。

例えば、山道を登り続けて発電量が追い付かなくなると、突然止まってしまうのではないか。

或いは急な山道を下り続けてバッテリーが一杯になっても回生ブレーキは効くのか、飛んでもない急坂を登り降りして過電流が流れる事はないのか、発電機やバッテリーの昇温は問題ないのか等々、心配のネタは山ほどあります。

そのためには、エンジンや発電機やバッテリーを余裕を持って大き目にすればその分懸念も和らぎますが、それでは重くなってコストも燃費も悪化しますし、そもそもエンジンルームに収まらなくなります。

とにかく大き過ぎず、且つ小さすぎない最適値を見極めるのが、かなり難しそうです。

一方、電動はあくまでも補助で、いざとなればエンジンで駆動できるパラレルハイブリッドの方が、間違いなく設計上のハードルは低いと言えます。


THS (Toyota Hybrid System) を搭載した初代プリウス

このためパラレル方式の初代プリウスは、いきなり現行と同じく動力分割機構に遊星歯車を使用したハイブリッド車として登場しました。


トヨタのハイブリッドシステム(動力分割機構に遊星歯車を使用)

一方e-POWERユニットの場合は、電気自動車→ハイブリッドの2ステップがどうしても必要だったのかもしれません。

となると、必要な発電部分の大きさは計算である程度は求められるでしょうが、実際には異なる仕様のe-POWERユニットをいくつか試作して、最適値の検証が進められたのは間違いないでしょう。

その検証と修正が何度か行われたとすると、それだけで数年を要する事になります。

そう考えると、現行ノートが発売されてまもなく数種類のe-POWERユニットを搭載したノートの試験車両が、日本全国を走り回っていたのかもしれません。

その場合、現行ノートと外観は全く同じですので、誰もそれが世界初の量産シリーズハイブリッド車だとは思わなかったでしょう。

そこまで考えると、突然発売された割には完成度が高いのも頷(うなづ)けます。




待たれていたe-POWERユニット


ここまで分かると、もう一つの謎も解けます。

なぜ突然ノートe-POWERが国内販売トップに躍り出たかです。

話題の新車が販売台数の上位に出てくる事は良くある事ですが、この様にマイナーチェンジで新しいパワーソースが追加されたぐらいでトップになる事は極めて稀です。

ネットでは試乗した感触が良かったとの感想が多く寄せられていますが、それだけでトップになれるとは到底思えません。

なぜだろうと不思議に思っていたのですが、e-POWERがかなり以前から準備されていたとすると、見えてきた事があります。

それは、供給者(メーカー)側だけでなく、需要者すなわちユーザーも、実はこの数年e-POWERユニットの登場を待ち続けていたのです。

滑らかで力強い走行の電気自動車には興味があるものの、走行距離と充電の問題で二の足を踏んでいた方々は、非常に多かったのでしょう。

そして実際に目にしたe-POWERユニットは、その期待以上の出来栄えだったのでしょう。


価格


とは言え、余りに価格が高ければ販売台数トップにはなれません。

と言う訳で、次に価格を調べてみる事にします。

車種\項目 価格帯 車両重量 バッテリー容量
ノートe-POWER 177~224万円 1170~1220kg 1.5kWh
ノート2WD・エンジン
(スーパーチャージャー)
139~193万円 1030~1090kg N/A
アクア 176~216万円 1060~1100kg 0.94kWh
リーフ 280~402万円 1430~1480kg 24~30kWh

上の表にあります様に、ノートe-POWERの価格帯は175万~224万円です。

またエンジンを搭載したノート(2WDスーパーチャージャー)の価格帯は139~193万円で、両者のメダリスト同士を比べると224万円と199万で、ガソリン車とe-POWER搭載車との差は25万円です。

となったら電気自動車に興味がある方は、当然e-POWERを選ぶでしょう。

なお一部の雑誌記事では、スーパーチャージャー無しモデルと比べて差が60万円と書かれていますが、e-POWERの動力性能からしたら、当然スーパーチャージャー付きと比べるべきでしょう。

一方ライバルであるトヨタ・アクアの価格帯が176万~216万円と、ノートe-POWERとほぼ拮抗しています。

アクアとプリウスだらけのスーパーの駐車場を見ると、それだけでノートe-POWERを選びたくなるかもしれません。

ただし良く知られている話ですが、アクアに搭載されたハイブリッドシステムは2代目プリウスのTHS IIを流用しているため、開発費は既に償却されています。

一方ノートe-POWERは、検討時代を含めれば凡そ10年が経過していますので、どうみても300万円超の値段が付いても不思議ではありません。

これを敢えてアクアと同じ値段にしたのは、かなり戦略的です。

初代プリウスも、将来の布石として215万円と当時としては破格の値段で販売されましたが、ノートe-POWERも間違いなくそれに近い対応です。

ただし初代プリウスとノートe-POWERの大きな違いは、前者は赤字覚悟だったのに対して、後者は間違いなく数を売って利益を出そうとしている所です。

実際この数か月の売り上げ台数は、間違いなくいそれを具現化しています。

問題はこの先どうなるかですが、年間の売上ランクの上位にe-POWER搭載車が食い込むのはほぼ間違いないでしょう。

もしそれが数年続いたら、ノートe-POWERは初代プリウス同様にクルマの歴史を変えた1台になるかもしれません。

先の事はともかく、それでは最後に純粋な電気自動車であるリーフと比べてみましょう。

これが最も衝撃的な事実と言えるかもしれません。

素人的に考えると、純粋な電気自動車よりエンジンを搭載したノートe-POWERの方が高いと思ってしまうのですが、上の表の様に何と100万円以上もリーフの方が高いのです

これはリーフの方が16倍も大きい駆動用バッテリーを搭載しているためですが、この価格差を見れば今後リーフの顧客の大半がノートe-POWERに流れてしまうと予想されます。

通常メーカーでは自社製品との競合を避けるのですが、日産としてはそれは覚悟の上で、想定内と言うよりも既定路線の事柄なのでしょう。

それを裏付けるもう一つの事実があります。

通常新車を発売するに当たっては、作り溜めをして発売後一気に売り、売れ過ぎた場合はバックオーダーとなり販売量は落ちるのですが、ノートe-POWERにおいては発売後も数か月間トップ3を維持しています。

という事は、日産は端(はな)からノートe-POWERは売れまくると予想して、大規模な生産計画まで立てていたのです。

この点からもe-POWERはかなり以前から用意周到に準備されていたのだと、推測できます。

価格面でもe-POWERが魅力的だと分かった所で、それではそろそろ新機軸に話を移したいと思います。


ワンペダルドライブ


ノートe-POWERで話題なのがワンペダルドライブ(日産ではe-POWERドライブ)と呼ばれる、アクセルを緩める事でブレーキを踏んだ様に急速に減速できるシステムです。

これについては、いくつ面白い話をお伝えしたいと思います。

1)目的


ワンペダルドライブが働くのは、ECOモードとS(スポーツ)モードで、NORMALモードでは働かないとあります。


ですのでこの主目的は、減速時の回生エネルギーを多く回収する事を目的にしている事は間違いありません。

このメカニズムをもう少し詳しくお話しますと、減速時にはタイヤの駆動によってモーターが回るので、モーターが発電機となり電気が発生します。

この発生した電気をそのまま使わないでいれば、モーターは惰性で回り続けます。

ですが、これに負荷を掛けるとモーターの回転が重くなるのです。

e-POWERの場合でしたら、発生した電気をどんどんバッテリーに充電すればするほど、モーターの回転が重くなるのです。

最近ではありませんが、以前ホームの到着した電車の下から熱風が噴き出しているのを覚えている方はいらっしゃらないでしょうか?


熱風が噴き出した懐かしい電車

これは減速時にモーターに抵抗を繋げて(負荷を掛けて)、発生した電気を熱に換えて大気に放出していたのです。

ですので、ワンペダルドライブは回生エネルギーを多く回収するための副産物とも言えるのですが、主目的以上に好印象の様です。

通常でしたら、何かを向上させれば相応の弊害があるのですが、この場合は燃費が良くなり、尚且つ運転が楽になるのですから、数少ない良い事ずくめの事例と言えます。

ついでに言っておくと、このモーターによる急速な減速時においてもブレーキランプは点灯しています。

2)他車


ではこのワンペダルドライブはノートe-POWERだけが可能かと言えば、そうではありません。

実はBMWの電気自動車であるi3や、回生レベルの調整が可能なリーフやアウトランダーPHEVでも可能です。


ワンペダルドライブが可能なBMWのi3

ではハイブリッドカーの代表各である、トヨタのプリウスやアクアはどうしてできないのでしょう?

実は機構上はどのハイブリッド車でも可能なのですが、(ノートe-POWERのノーマルモードと同様に)エンジン車と比べて違和感が無い様に、回生ブレーキの効きを抑えて惰性で走行する設定にしているからです。

特にトヨタはプリウスでブレーキ抜け問題を起こした事から、回生ブレーキの扱いには慎重(臆病)にならざるを得なかったのかもしれません。

ですがワンペダルドライブの評判の良さから、今後他車も追随するのは間違いないでしょう。

3)将来


是非ともお伝えしたいのがここです。

このワンペダルドライブによって回生ブレーキの強さが認知されましたが、実はこのブレーキを更に強くする事ができるのです。

その方法は簡単で、モーターに逆回転の電圧を掛けてやれば良いのです。

そうすれば、モーターだけで急ブレーキも可能なのです。

現在は保安基準があって、どうしてもクルマを停止できるメカ的なブレーキを搭載しなければいけないのですが、今後保安基準が見直されれば、ブレーキのないクルマができるかもしれません。

そう聞くとディスクブレーキ以上にコントロールし易いブレーキはないとか言う方もいらっしゃるでしょうが、モーターに掛ける電圧によっていか様にも制御できるモーターブレーキに敵うはずはありません。

4)ガソリン車でも可能


ところでこのワンペダルドライブですが、普段乗っているガソリン車でも可能なのです。

と言って特別な事をするのではなく、止まりたくなったら、平地でもどんどんシフトダウンしてエンジンブレーキを効かせば良いだけの話です。

ただしマニュアル車の場合ですとダブルクラッチが必要となり、とてもワンペダルとはいきませんが、AT車であればそれが可能です。

この場合、シフトダウンの度に軽い衝撃がある(体が前に倒れる)ので、とても快適とは言えませんし、電気自動車の様に回生エネルギーの回収もできませんが、実は多少良い事もあるのです。

先ず1点目はエンジンブレーキで減速する事により、ブレーキパッドの寿命を延ばす事ができます。

2点目はエンジンの回転数が上がるため、通常より早く鉛バッテリーを充電する事が可能です。

3点目は同じくエンジンの回転が上がる事により、エアコンの効きを良くする事が可能です。

夏場にエアコンの効きが悪いと思ったら、減速時にシフトダウンする事をお勧めします。

ただしその場合、ブレーキランプが点灯しないのでご注意を。


バッテリーが一杯になったら回生ブレーキは働くのか?


回生ブレーキ(モーターブレーキ)の話をしたついでに、この話をしておきましょう。

例えばノートe-POWERで下り坂を走っていたとします。

下り坂の途中でバッテリーが一杯になったとします。

とすると、モーターが発電した電気の行き場がなくなります(負荷が無くなってしまいます)ので、回生ブレーキは働かなくなってしまうのです。

平坦な道なら問題ないでしょうが、下り坂でエンジンブレーキに当たる回生ブレーキが効かなくなるのは、安全性からかなり問題になります。

このためノートe-POWERではどうしているかと言えば、このモーターで発電された電気で発電機を回して負荷にしているのです。

何を言っているのか良く分からないと思いますので、下の図を使って説明すると、モーターで発電された電気は、インバーターと一杯になったバッテリーを通過して、発電機を回します。


発電機を回すと聞くと奇妙に感じるかもしれませんが、発電機とモーターは同じ構造ですので、発電機の端子に電圧を掛ければ、今度はモーターになって回り出すのです。

そしてこの発電機で、止まっているエンジンを一生懸命回す事で負荷にしているのです。

ですからこの時の排気管から出てくるのは、排気ガスではなくエンジンによって暖められた空気という訳です。

できれば止まったエンジンを回せば、周囲の空気を取り込んで、燃料を抽出できれば良いのですが、そうはいかないのはご存じの通りです。


時速60kmが決めての燃費性能


燃費はご存じの通りで、ノートe-POWERの燃費追求モデルで37.2km/L、標準モデルで34km/Lです。

一方、つい最近マイナーチェンジしたアクアの燃費が38km/Lです。

JCO8モードの燃費ではアクアが上回りますが、日産の見解によれば、60km/h以下の走行では、ノートe-POWERは誰にも負けないと豪語しています。

そう聞くと、大した事では無い様に思えてしまいますが、そうでもありません。

実際に普段60km/h以上で走行する事が、どれくらいあるか考えてみて下さい。

一般道の最高速度は60km/hですし、首都高の最高速度も8割が60km/h以下で相変わらず合流地点は渋滞していますので、そうそう60km/hを超える事はありません。

よしんば、空いた高速道路を利用して高速走行したとしても、ノートe-POWERの80~100km/hでの高速巡航燃費が18~20km/Lで、アクアが20~25km/Lですので、とてつもなく差がある訳ではありません。

いずれにしろ、60km/h以上で走る機会が少なければ少ないほど、ノートe-POWERの方が断然有利になると言えます。

また60km/h以下で走行している限り、ガソリンエンジンを搭載した市販車の中で、最も燃費が良い可能性があるのです。


天下無敵の動力性能


燃費もさることながら、もっと驚いたのは、その動力性能です。

リーフと同じモーターを使っていて、尚且つエンジンまで搭載しているので、リーフと同じくらいの動力性能かと思っていたのですが、実はノートe-POWERはリーフより何と250kgも軽いのです。

この要因は、前述した様に駆動用バッテリーの大きさがリーフの1/16だからでしょう。

大人4人分も軽ければ、運動性能はかなり期待できます。

前置きはこれくらいにして、ノートe-POWERの動力性能を、いつものトルクウェイトレシオの表に入れてみるとどうなるでしょうか?

車名 馬力
/回転数
トルク
/回転数
重量 PWR
kg/ PS
(速度
TWR
kg/ kgf・m
(加速)
PWR(青線)とTWR(赤線)
のグラフ
(数値は最高速度と0-100km)

エクストレイル(D)
173 PS
3,750 rpm
36.7 kgf・m
2,000 rpm
1,660 kg 9.60 45.2 ||||| |||||
||||| ||||

ノートe-POWER
109PS
3k-10k rpm
25.9kgf・m
0-3k rpm
1210 kg 11.1 46.7 ||||| ||||| |
||||| ||||

JUKE
190 PS
5,600 rpm
24.5 kgf・m
2,000-5,200 rpm
1,290 kg 6.79 52.7 ||||| ||
||||| ||||| |

ランドクルーザ
318 PS
5,600 rpm
46.9 kgf・m
5,600 rpm
2,530 kg 7.96 53.9 ||||| |||
||||| ||||| |

アルファード
3500
280 PS
6,200 rpm
35.1 kgf・m
4,700 rpm
1,940 kg 6.93 55.3 ||||| ||
||||| ||||| |

S2000
242 PS
7,800 rpm
22.5 kgf・m
6500 rpm
1,260 kg 5.21 56.0 ||||| |
||||| ||||| ||(5.4 s)

リーフ
109 PS
3,008 -10k rpm
25.9 kgf・m
0-3,008 rpm
1,460 kg 13.4 56.4 ||||| ||||| |||
||||| ||||| |

New CR-Z
136 PS
6,600 rpm
19.4 kgf・m
1,000-2,000 rpm
1,140 kg 8.3 58.8 ||||| ||||
||||| ||||| ||(8.2 s)

トヨタ86
200 PS
7,000 rpm
20.9 kgf・m
6,400 rpm
1,230 kg 6.15 58.9 ||||| ||
||||| ||||| ||(8.6 s)

三菱i-MiEV
64 PS
3000-
6,000 rpm
18.4 kgf・m
0-2,000 rpm
1,110 kg 17.34 60.3 ||||| ||||| ||||| ||
||||| ||||| ||

旧ロードスター
162 PS
6700 rpm
19.3 kgf・m
5,000 rpm
1,170 kg 7.22 60.6 ||||| ||
||||| ||||| ||

これをご覧頂きます様に、名だたるスポーツカーや3000cc級の大型車よりも加速性能は上で、旧エクストレイルのディーゼルターボに肉薄しているのです。

試乗記事では、パワフルとかレスポンスが良いとか書かれていますが、数値で見ると半端ない加速性能です。

ガソリンにしろディーゼルにしろ、エンジンはアクセル踏み込みから立ち上がりまで多少時間が掛かりますので、もしエンジンを吹かさないでシグナルグランプリを行えば、これに叶うクルマは無いかもしれません。

一言で言えば、天下無敵のコンパクトカーです。


丁度うまい具合に日産のHPに、これを説明するチャートがありました。

下のチャートを見ると、確かにノートe-POWERの加速が一気に立ち上がるのが分かります。


日産HPにある2リットルターボとの加速度比較チャート

ただしかなりいい加減なチャートなので、本書としては苦言を呈しないではいられません。

細かく計算はしていませんが、恐らくこのチャートの加速度上限は0.5G程度で、時間のスパンは3秒程度だと思います。

それは良いのですが、このチャートを見るとノートe-POWERは永遠に0.5Gの加速度で走り続けられる様に思えてしまいます。

もしそうならば、6秒後に時速100km、12秒ほどで時速200kmにも達してしまいます。

正しくはせいぜい2.5秒程度で加速度は低下し始めて、14秒後くらいには最高速度に達して加速度はゼロになる筈です

イメージ用のチャートかもしれませんが、余りにも不正確過ぎます。

もっとおかしいのは比較用の2.0Lターボ車です。

これに至っては、更に加速度は伸びて0.8G程度まで達しています。

GT-Rでしたら瞬間的に1G程度まで出るでしょうが、2.0Lターボ車で0.8Gも出せるクルマが世の中にあるのでしょうか?

例えば2Lターボを搭載したインプレッサスポーツでも、最高加速度は0.5G程度です。


2Lターボを搭載したインプレッサスポーツ

HPの注書きによれば、この2.0Lターボ車は自社のクルマとの事ですので、是非車種を教えて頂きたいものです。

よしんばこの2.0Lターボ車の最大加速度が0.5Gだとしても、瞬間でも最大トルク25.9kgf・mで重量1210kgのノートe-POWERを上回る事があるのでしょうか?

ちなみに前述のインプレッサスポーツの最大トルクは20.0kgf・mで、重量は1400kgもあります。

更におかしいのは、加速度が一番良いのはタイヤのトルクが最大となる1速のときですので、シフトアップして更に加速する事は決してありません。

にも関わらず、このチャートでは2速にシフトアップしてから更に加速していますので、もうメチャクチャとしか言いようがありません

宣伝用のチャートは外注のデザイナーが色々手を入れるのでしょうが、さすがにこれは頂けません。

ついでに言わせて頂ければ、このチャート右下に書かれた最大トルク発生回転数の3008rpm(リーフも同じ記述ですが)も奇妙です。

この”8”には何の意味があるのでしょうか?

もしかしたらエンジンの最大トルク発生回転数と違って、モーターなので設計値を記入しているのかもしれませんが、だとしたらカタログ値としての数値の丸め方を考えた方が良い様に思います。

日産が自ら作ったこのいい加減なチャートのおかげで、折角の天下無敵の動力性能にかなり水を注された感じです。


ただし、これを論理的に考えると、かなり不思議です。

電気自動車と言えども、元になる動力源は1200ccの自然吸気ガソリンエンジンです。

発電専用なので燃焼効率の良い回転数が使えるとは言え、それに発電機やモーターやバッテリーを追加する事で、なぜこんなにも加速性能がアップするのでしょうか?

後日じっくり考えてみたいと思います。

なおノートe-POWERのパワーウェイトレシオは11.1ですので、最高速度は恐らく130km/h前後と推測されます。

これぐらいであれば、高速もストレスなく走れますし、多少の登り坂でも100km/hを維持できそうです。

ただし燃費を重視するのでしたら、賢く機敏に登板車線に移りましょう。


e-POWERの欠点?


ノートe-POWERの記事を見ると、間違いなく書かれているのはこれです。

高速走行で燃費が悪化するのが欠点である。

それは確かなのですが、はたしてこれを欠点と呼べるのでしょうか?

下のチャートをご覧下さい。


これはトヨタが作成したエコカーの棲み分けを表したチャートです。

これをご覧頂きます様に、元々電気自動車は低速短距離用のクルマなのです。

言い換えれば、高速長距離を想定した乗り物ではないのです。

ですので、ノートe-POWERが高速走行では燃費が悪化するというのを欠点と言うのならば、机にある置時計が腕に付かないのを欠点というのと同じ事の様に思うのですが、いかがでしょうか?

あるいはタブレット端末が、ポケットに入らないのを欠点と言う様なものです。

少なくともノートe-POWERは、電気自動車の走行距離と充電の問題を克服して、高速走行でもガソリン車並みの燃費を実現しているのですから、これをしたり顔で欠点と呼ぶにはかなり無理があると思います。


本当の欠点


先ほど、高速で燃費が悪化するのは欠点とは呼ばないとお伝えしましたが、それではノートe-POWERの本当の欠点は何なのでしょうか?

欠点の無い物など存在しない筈ですが、簡単には思い付きません。

強いて言えば一つだけであります。

それは全て前輪が担っている事です。

普通のFF車であれば、駆動と操舵は前輪ですが、ブレーキは4輪が担います。

ですが回生ブレーキを多用すると、モーターに繋がっている前輪だけがブレーキを担います。

ですので、通常のFF車より前輪が早く摩耗する事になります。

ただしブレーキパッドの減りは間違いなく遅くなります。

これもはたして欠点と言えるものかどうか分かりませんが、一応お伝えしておきます。

なおついでにお話ししますと、ノートe-POWERはモーターもエンジンもフロントに搭載されましたが、専用設計の車体であれば、モーターとエンジンを離して搭載する事も可能です。

となると、エンジンはフロントで、モーターはリアに搭載すれば、重量バランスも良くなりますし、発進時のトラクションも駆動輪に掛かりますし、更に回生ブレーキを掛けた時の姿勢も安定します。

もしe-POWERユニットを搭載したスポーツ専用モデルが出るとしたら、そんな配置になるかもしれません。


電気自動車のまったく新しいカタチ


また”電気自動車のまったく新しいカタチ”という宣伝文句に対しても、昔からの知られているシステムで違和感があると批判する声が多々あります。

確かにシリーズハイブリッドは誰でも思い付くシステムですが、それを実現させ、更に普及させるのとは雲泥の差があります。

また中には100年以上も前にポルシェがシリーズハイブリッド車を数台製造販売したから、新しくはないとの指摘もあります。

その真偽の程は不明ですが、一応お伝えしておきますと、元々ポルシェ博士は電気技術者で、自動車の動力は内燃機関よりモーターの方がトルク特性が優れ、ミッションも必要なく、速度制御も用意だとの思想を持っていたのです。

このため、信じられないかもしれませんが、あのタイガー戦車の試作でもこのモーター駆動を採用した程なのです。


ガソリンエンジンが採用されたドイツ軍のタイガー戦車

その結果がどうだったかは歴史が物語っています。

それはともかく、設計思想が全く異なっている物を引き合いに出して、新しくないとまるで鬼の首を取ったかの様に指摘するはどれだけ意味がある事なのでしょうか?

さらにノートe-POWERはハイブリッド車だから、電気自動車と呼ぶのは間違いだとの指摘もあります。

確かにノートe-POWERは構造上ハイブリッド車ですが、モーターだけで走るという意味では間違いなく電気自動車です。

これらの定義はISOで決まっている訳ではないので、余りに意味のない議論です。

いずれにしろ、誰でも思い付くシステムでありながら、誰もがやってみなかった画期的な電気自動車である事に間違いありません。


静粛性


シリーズハイブリッドと言えども、発電のために一度エンジンが稼働すれば、普通のガソリン自動車と同じレベルの騒音が発生します

となると、モーターで走るシリーズハイブリッドは、常に静かに違いないと期待していたユーザーにとっては、かなりガッカリではではないでしょうか?

品質とは、製品の機能と顧客の期待との合致度の事ですので、例え一般車並みの騒音であっても、それが顧客の期待以下であれば、それだけで品質が悪いという事になってします。

このため驚いた事に、ノートe-POWERにはガソリン車以上の遮音対策が施されているのです。


正直コンパクトカーにおいて、ここまでの遮音対策を施しているとは驚きです。

この事からも、ノートe-POWERは突貫工事で短期間で作られたクルマではない事が伺えます。

特に上位モデルのメダリストに至っては、エンジン音や排気音とは全く関係無い、側面の遮音対策まで行っており、動く応接室とは言わないまでも、高級車並みの対応です。

これを知っただけで、ここは一丁奮発してメダリストを購入しようかと思う方も、かなりいらっしゃるのではないでしょうか。


インパクト


ノートe-POWERの大ヒットに対して各メーカーは平静を装っていますが、この衝撃はかなりのものだと思います。

何しろ時速60km以下では世界トップクラスの燃費性能で、おまけに加速性能も静粛性も一級品なのですから。

それでいて従来の航続距離や充電場所の問題もクリアして、さらに価格も従来のハイブリッド車並みに抑えているのです。


恐らくどのメーカーも、慌てて競合車の検討を進めている事でしょう。

中でも一番慌てているのは、電気自動車で唯一絶好調なUSAのテスラ(旧テスラモーターズ)かもしれません。

テスラ車の特徴は、大柄で流麗な車体に山の様なバッテリーと強力なモーターを積んで、広い室内と長い航続距離と強力な加速性能を提供している事です。


テスラ・モデルX

ですがノートe-POWERの登場によって、発電用エンジンを電気自動車に搭載すれば、重さもコストも航続距離も大幅に改善できる事が白日の下に曝(さら)されてしまいました。

ところが、テスラでは内燃機関のノウハウが全く無いため、エンジンを自社で生産する事はできないのです。

今まではトヨタが出資していたので、必要ならトヨタからエンジンの供給を受けれたかもしれませんが、最近になってトヨタは完全にテスラから撤退してしまいました。

テスラの株価は現在絶好調ですが、これからどうなるか非常に興味のある所です。


テスラの株価(NASDAQ)は現在(2017/6)絶好調

トヨタは実に良いときにテスラの株を売り払ったものです。

また従来ガソリンエンジンは枯れた技術と見られていましたが、e-POWERの大ヒットに伴って数十年寿命が延びたかもしれません。

なおe-POWERについては、今後ミニバンのセレナやSUVのジュークにも搭載されるそうです。


まとめ


それではまとめです。

①ノートe-POWERは誰もが思い付く発電機付きの電気自動車ではあるが、今まで誰も作った事が無かった画期的なクルマである。

②e-POWERユニットはリーフの発売前から既に計画されており、日産にとって電気自動車の本命は、リーフではなくノートe-POWERだった可能性がある。

③ノートe-POWERが一気に大ヒットしたのは、以前から発電できる電気自動車を待ち続けていたユーザーが多数存在していたからである。

④ワンペダルドライブは、今後ハイブリッド車に急速に普及する可能性がある。

また保安基準の改定に伴い、今後メカブレーキの無いクルマも出現する可能性もある。

⑤時速60km以下のスピードであれば、ノートe-POWERは世界一燃費の良いクルマかもしれない。

⑥コンパクトカーとしては、ノートe-POWERは天下無敵の加速性能である。

⑦電気自動車において、高速での燃費の悪化を欠点とは呼ぶのは無理がある。

⑧ノートe-POWERの静粛性については、ユーザーの期待に沿う対応が図られている。

⑨ノートe-POWERは、クルマの歴史を変えるかもしれない。


本書がお役に立てば幸いです。




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