小学生でも分かるトルクと馬力の話 
(本当に早いクルマとは?)


 14. クルマの姿勢と安定性
  14-1. 発進時に後が沈むのはなぜ?
  14-2. 制動時に前が沈むのはなぜ?
  14-3. コーナの安定性と重心についてⅠ
  14-4. コーナの安定性と重心についてⅡ

第14章:クルマの姿勢と安定性
(発進時、制動時にクルマの前後が沈むのは何故か?)


14-1. 発進時に後が沈むのはなぜ?


さてまたまた問題です。

クルマを急発進させると、クルマ後部が沈み込みますがなぜでしょうか?

一方今度は、急ブレーキを掛けたとすると、クルマ前部が沈みますがなぜでしょうか?

この傾向は、程度の違いこそあれFF或いはFRでも同じ様にあります。

先ず発進時になぜ後輪側が沈むかですが、以下の様に考えて頂ければ良いと思います。

まずここに、電池で動くおもちゃの自動車があるとします。

このおもちゃを手に持って、電源スイッチを入れると後輪が回ります。

今度はそのおもちゃの後輪タイヤを持って電源スイッチを入れると、どうなるでしょうか?

なかなかイメージし難いのですが、後輪を中心に本体部分が赤い矢印の方向(右回り)に回転します。
               
一方実際のクルマの場合、走りだす直前は地面にタイヤが固定されている事になりますので、エンジンから駆動が掛ると、一瞬上図と同様に駆動輪を中心に本体部分を右回りに回転する(前部が上がり、後部が下がる)力が働きます。

これによって、前輪側が浮き後輪側が沈むという訳です。

ただしクルマが一旦動き出せば(或いはタイヤがホイールスピンすれば)、→地面によるタイヤの固定が無くなり→本体部分を回そうとする力が無くなり→この現象自体も無くなります。

この現象は、駆動輪の接地力が大きい程発生しますので、FR車よりFF車で顕著に見られます。

なおこの現象をもって、FR車の方が加速時のグリップが良いという方もありますが、この現象はほんの一瞬の事ですので、残念ながらさほど根拠のある話ではありません。 (ただし僅かですが、走行中もタイヤが回る反作用で本体を矢印方向に回転させる力は働いています)

それよりもむしろFFの方がこの現象が顕著に表れるという事は、FFの方が駆動輪のグリップが良い事の表れですので、これからしても加速中つねに駆動輪に荷重が掛るFFの方が加速が良いとう事になります。

なお前部が浮くほどの現象は見れないものの、加速中は(定速走行中より)後輪側に荷重が掛り続けます。


14-2. 制動時に前が沈むのはなぜ?


発進時の話をした所で、今度は制動時にクルマ前部が沈む理由を考えてみましょう。

      

この現象も、FF車或いはFR車に限らず全てのクルマで発生します。

この理由も簡単で、タイヤは停まろうとしているのに対して、車体は慣性の法則で進もうとしますので、地面より上にある重心が前輪側に掛るためです。

上の図で大凡その感触がつかめると思います。

ですのでこの傾向は、重心が高く、前方にある程顕著になります。

逆に言えば、スポーツカーの様に重心が低く、リアが重いクルマ程、この傾向が少なくなります。

リアにエンジンを積んだポルシェ911のブレーキ性能が高いと言われるのは、この理由からです。

なお制動時と書きましたが、程度は緩やかながら減速すれば前輪側に荷重が掛ります。




14-3. コーナの安定性と重心についてⅠ


それでは次に、クルマの安定性と重心の関係について述べたいと思います。

よくクルマの安定性を増すには重心を下げるしかないと言いますが、本当にそれだけでしょうか?

という訳で、以下の様に大きさの異なる二つのピラミッドを考えてみましょう。

          

大きさは違いますが、重さは同じで、且つ重心の位置も同じ様にピラミッドの中心にあるとします。

としますと右のピラミッドは、左のピラミッドより重心位置は高いものの、その分横幅があるので安定感は同じなのは感覚的に分かって頂けると思います。

ここまで分かった所で、ではこのピラミッドにタイヤを履かせてみましょう。
         
どうです。

何となく言いたい事が分かって頂けますでしょうか?

そうです。確かにクルマの重心が下がれば、クルマの安定性は増すのですが、クルマの重心が上がっても横幅を広げればそれと同じ様に安定性を増す事ができるという訳です。

という訳で、同じ横幅ならばクルマの重心位置を比較する意味があるのですが、横幅の異なるクルマ同士で重心の位置を比較するのは全く意味がありません。

もし異なる横幅のクルマの安定性を比較したいのならば、“重心の高さ”と“横幅”の比率を比較しなければいけないという訳です。

仮に左右のタイヤ間の距離(トレッド)が150cmの場合で、もし重心の位置が65cmから70cmに5cm(8%)高くなったとしたら、同じ安定性を得るためには計算上トレッドを162cm(+8%)広げる必要があります。

逆に言えば重心を1cm下げるという事は、安定性においてトレッドを約2cm広げるのに匹敵する効果があるという事です。


さて最後にもう一言お伝えしなければなりません。

上記は重さが同じ場合ですが、折角重心を下げてもそれに伴って重さが増えたら何にもなりません。

例えば、重心の高さを70cmから65cmに8%下げたとしても、重さが1400kgから1500kgに8%アップしたら、コーナにおける安定性は同じ事になります。
(ただし重量アップに伴い運動性能も燃費も悪化します)


14-4. コーナの安定性と重心についてⅡ


安定性について理論が分かった所で、実際のクルマで見てみましょう。

低重心を売りにしているスポーツカーのトヨタ86と、車高の高いRV車であるマツダCX-5を比べてみるとどうなるでしょうか?
     
 重心の高さ÷トレッド=  54%               42%

生憎両者の正確な重心位置は不明なのですが、簡単に全高の半分の高さに重心があるとしたら、重心とトレッド間の比率は上記の様になります。

すなわち86の方が12%安定性が良いと言えます。

また重さを考慮すると、CX-5がトヨタ86より1.2倍(1510kg/1230kg)重いので、単純計算でCX-5が66%となり、トヨタ86の方が24%安定性が高い(24%高い横Gに耐えられる)といえます。




第14章: クルマの姿勢と安定性

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