小学生でも分かるトルクと馬力の話 
(本当に早いクルマとは?)



 15. タイヤⅠ
  15-1. タイヤは太い程グリップは良い?
  15-2. 扁平タイヤのCPは?
  15-3. タイヤの空気圧
  15-4. 雨で滑り易いタイヤの空気圧は?
  15-5. タイヤに窒素ガスは有効?(前篇)
  15-6. タイヤに窒素ガスは有効?(後篇)
  15-7. 高級タイヤはやっぱり違う?
  15-8. 轍にハンドルを取られる理由←2015/8/23追加


第15章:タイヤⅠ
(タイヤに関する余りにも多くの誤解を一掃する)


15-1. タイヤは太い程グリップは良いのか?


さて、またいつもの様に問題です。

以下の図の様に、倉庫の作業員が段ボールの箱を床を滑らせながら運んでいました。


この場合、箱を寝かせた場合と立てて滑らせた場合で、どちらが楽に(軽く)動かせるでしょうか?

これは実際に経験してみないと分からないかもしれませんが、どちらも押す力は同じなのです。

もし手元に消しゴムがあったら、机の上で立てた場合と寝かせた場合でどちらが重いか鉛筆で押してみれば、何となく分かって頂けると思います。

これが何を意味するかと言えば、段ボール箱と床との摩擦抵抗は、接地面積の大きさにはまったく関係しないという事です。

もしまだそんな事はないと思っている貴方に、衝撃の事実をお教えしましょう。

なんと、貴方が小学校の頃に習った理科の教科書にこう書かれているのです。

物体と物体の摩擦力は、その接触面積にはよらず、荷重に比例する。

そして、摩擦力(F)=摩擦係数(μ)×荷重(P)である。

どうです?

これで納得して頂けましたでしょうか?

摩擦力の計算の中に、面積は一切入っていないのです。

これをタイヤに当てはめてみると、誰もがタイヤが太い(接地面積が大きい)方がグリップが良いと思っているのですが、実は全く関係しないという事です。

すなち、タイヤが太くても細くても、グリップ(摩擦力)は全く同じなのです。

だとするとなぜF1をはじめとするハイパフォーマンス車のタイヤが太いかと言うと、細いタイヤだと耐久性が足りないからです。

  

もう少し詳しく説明しますと、太いタイヤにすると単位面積当たりの荷重が小さくなるので、その分耐久性に優れる(摩耗し難い)という訳です。

ですので、例えばF1カーのタイヤを大きくして接地面積を2倍にすれば耐久性も2倍になるので、タイヤの交換回数を半分に減らす事ができます。

ただしそうすると荷重も増え、空気抵抗も増えるので、総合的に判断して一番妥当な大きさに抑えているのです。

例え話を段ボールに戻すと、床と擦った事による段ボール底面へのダメージは、接地面積の広い寝かした場合より、接地面積の狭い立てた場合の方が大きいといえばイメージし易いでしょうか?

タイヤの空気圧と接地面積と走行抵抗

2016/10/19(水)


本件に関して、本書の読者より以下のメールを頂きました。

①タイヤの空気圧が低いと、タイヤの接地面積は大きくなる。

確かにその通りです。

②そしてタイヤの空気圧が低いほど、走行抵抗は大きくなる。

これもその通りで、確かにタイヤの空気圧を下げると、乗り心地は良くなるものの、明らかに燃費は悪化します。

③故に接地面積が増えれば、摩擦力が増えグリップは良くなる筈だ。

いかがでしょう。

一見正しい様に感じるのですが、一か所だけ誤解があります。

それは②から③に、話が移行する所です。

もしタイヤの走行抵抗が路面からの摩擦力だけでしたら、この理論は正しいのですが、残念ながらもっと別の要因もあるのです。

下の図は日本自動車タイヤ協会作成資料ですが、これをご覧頂きます様にタイヤが受ける抵抗は路面からの摩擦力(接地摩擦)だけではなく、タイヤ変形と空気抵抗があるのです。



日本自動車タイヤ協会作成資料

空気抵抗についてはタイヤの空気圧の違いでは無視できるとして、空気の抜けたタイヤにおいて走行抵抗が増えたのは、タイヤの摩擦力が大きくなったためではなく、タイヤの変形量が大きくなり、それによって走行抵抗が増えてしまったためなのです。

空気が抜けたタイヤの一部分を見ると、走行中常に伸びたり縮んだりを繰り返している事になりますので、これによって駆動力の一部をタイヤの発熱に消耗してしまっているという訳です。

タイヤ変形については次のタイヤⅡでまたお話しますが、一応ここにも載せておきます。






15-2. 扁平タイヤのコストパフォーマンスは?


次に流行りの扁平タイヤですが、本当にコストに見合う価値があるのか考えてみましょう。

結論から先に述べ言いますと、アルミホイール同様、余程無謀な運転をしない限りコストに見合う実質的な効果は無いと言えます。

以下はブリジストン(株)が公表している扁平タイヤの特徴です。

1.操縦安定性が向上する
2.コーナリング性能が向上する
3.ブレーキング性能が向上する
4.乗り心地が硬めになる
5.走行音が大きめになる

扁平タイヤは厚みが薄くなる分、横方向の力が加わるコーナリング時に変形し難く、接地面積が変化し難いという明確な特徴があります。

このため1~3の効果は、サーキットでそれなりのスピードで走行すれば体感できるのでしょうが、通常の走行ではかなり無理な運転をしなければ殆ど実感できません。

一方4~5の短所については、数m走っただけで誰でも気が付く程悪化します。

これも良く言われる事ですが、普段使うスピードは時速100km程度であっても、時速200kmで走るクルマの方が安全性能は高い、と言われますが本当でしょうか?

タイヤの場合でしたら、例えば普段時速70kmで走るコーナがあったとして、扁平率65%の限界速度が時速100km、扁平率55%の限界速度が120kmだとしましょう。

この場合、確かに限界までのマージン(余裕度)は、扁平率55%の方が高いのですが、時速70kmで走っている限り安全性には全くと言って良いほど差はありません。

もしコストが同じで且つ弊害が何も無いのならば、当然限界に対するマージンは大きい方が良いのですが、扁平率が低くなると極端に価格が高くなり、且つ乗り心地も悪くのを考えると、一般のドライバーにとって扁平化のメリットは無いと断言できます。

さらに付け加えると、タイヤの扁平化に伴いホイールもインチアップが要求され、ホイールのコストもアップする事を忘れてはなりません。

繰り返しになりますが、一生の内に経験するかどうか分からない限界走行のために、乗り心地を犠牲にしさらに余分なコストを支払う意味は見出せません。




15-1. タイヤは太い程グリップは良い?

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第14章: クルマの姿勢と安定性

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15-3. タイヤの空気圧







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