小学生でも分かる
ホイールアライメントの話



目次


  1. はじめに
  2. 結論
  3. 直進性能と旋回性能
  4. キャスター角の効果
  5. キャスター角は常に有効ではない
  6. キングピンとスクラブ半径
  7. キングピン角
  8. タイヤの横変形とスクラブ半径の関係
  9. スクラブ半径の走行時への影響
 10. キャンバー角の効果と弊害
 11. トウはゼロが最適値
 12. まとめ

5. キャスター角は常に有効ではない


前項でキャスター角を付ければ直進性能が良くなるとお伝えしましたが、常に有効なのでしょうか?

実はそうではないのです。

それを自転車を例にご説明したいと思います。

恐らく、エッと驚かれる話が含まれていると思います。

1) 後退時


先ずハンドルを持たずに、サドルを持って自転車を前方に押してみて下さい。

最初は多少ふらつくかもしれませんが、慣れればハンドルを抑えなくても真っすぐ進む事ができます。

ところが今度は後退してみて下さい。

真っすぐ戻ろうとしても、どうしてもハンドルが曲がってしまうと思います。

この理由は、以前使った図から簡単に説明できます。


上の図は自転車が前進したときを表しています(前述と同じです)ので、後退時は全ての矢印が逆を向きます。

ですのでタイヤが地面から受ける力(赤の矢印)も逆に向きますので、タイヤがどちらかに少しでも曲がると、更にタイヤを曲げ様とする力が働くという訳です。

押していた台車を引くと、前輪のキャスターが一気に180度向きを変えるのと同じ理由です。

またカーアクションの一つに、高速でバックしながら一気にハンドルを切ってUターンするバックスピンターンは、この現象(ハンドルを切った方向に更に回ろうとする)を利用したものです。




2) 減速時


後退時にはキャスター角が逆の作用をする(ハンドルを回転させ様とする)事は、殆どの方はすでにご存じだと思います。

それでは次に減速時を考えてみまましょう。

突然ですが、自転車での手放し運転はできますか?

何方も子供のころ、1度や2度はやった事があるのではないでしょうか?


そのときを思い出して頂きたいのですが、ペダルを漕がないでも手放し運転できましたか?

覚えていらっしゃらないかもしれませんが、ペダルを漕ぐのを止めた瞬間、自転車がフラツキハンドルに手を添えなければいけなくなります。

スピードが遅くなるからだと思ってスピードを上げても、やはりペダルを漕がないと不安定になります。

なぜなのでしょうか?

実はそれも後退時と同じ理由なのです。

先ず下の絵を見て下さい。


人が走る場合、後ろ側に地面を蹴って走ります。

また止まろうとする場合は、(惰性で多少走り続けるものの)前方側に足を踏ん張ります。

すなわち、走行時と減速時では地面から足の裏に掛る力の向きが変わる事はご理解頂けると思います。

これと似た様な事が、クルマや自転車でも起きます。

それでは次に、下の絵をご覧下さい。


少々分かり難いかもしれませんが、これは加速/定速時、減速時、後退時における、タイヤへの力の掛り具合を示したものです。

一番左の加速/定速時においては、タイヤが路面からの力を受けて回転していますので、タイヤの移動量(緑の矢印)と路面の移動量(青の矢印)を比べると、路面の移動量の方が多くなります。

このため、タイヤには赤い矢印の力が生じます。

ところが図中央の減速時になると、タイヤは紫の矢印方向に回転しようとするものの、路面は止まろうとしますので、逆に路面の移動量の方が小さくなります。

このため、タイヤが逆回転した(後退した)のと同様に、タイヤには赤い矢印が生じるのです。

ですので、減速時においてもタイヤの向きが不安定になり、手放し運転ができなくなるのです。

サドルを持って自転車を押している場合も、止まろうと減速するとハンドルが不安定になるのですが、短時間ですので気が付き難いだけです。

またクルマの場合も、減速時はキャスター角の影響で前輪は不安定になるのですが、後述するキングピン角の効果で自転車ほど不安定にはならないという訳です。

まとめとしては、以下の通りです。

後退時及び減速時には、キャスター角によってハンドルを180度反転させ様とする力が働く。

いずれにしろ自動航行システムが完成するまで、手放し運転は控えましょう。

3) 後退中の加速時と減速時


ついでですので、この話しもここでしておきましょう。

バックのまま走り続ける方もいないと思いますが、それでは後退中の加速時と減速時はどうなるかも見ておきましょう。


前進時と全てが逆になりますので細かい説明は不要とは思いますが、要点としては後退中であっても減速時はタイヤは真っすぐになろうとするという事です。

ですので、前述のバックスピンターンにおいて、少しでもためらってアクセルを緩めると失敗します。

何故ならば、タイヤを横滑べりさせるほどのスピードに達しない事と、アクセルを戻す(減速する)事でハンドルが中立に戻ろうとする力が働くためです。

屋上屋を重ねる説明になってしまいましたが、全てまとめると、以下の表になります。

キャスター角の効果
向き 前進時 後退時
運動状態 加速 定速 減速 加速 定速 減速
ハンドルの挙動 安定 安定 不安定 不安定 不安定 安定


この表で”安定”というのは、ハンドルが中立に向く事で、”不安定”という事は右か左のどちらかに向こうとする事を指します。

という訳で是非ここでは、キャスター角は常に直進性能に有効ではないという事を分かって頂けましたでしょうか。

また今後ご説明します他のホイールアライメントの要素におきましても、クルマの進行方向と運動状態で異なる働きをする事になります。


4) 横風


では最後にもう一つ質問です。

横風を受けた場合でも、キャスター角は有効でしょうか?

答えは、NOです。

ご存じの様に横風を受けた場合も、当然クルマも直進できなくなりますが、タイヤの向きが変わった訳ではないので、キャスター角があっても何もしてくれません。

ですので走行中に横風を受けた場合は、風上に向かって少しハンドルを切って走らなければ、真っすぐ走る事はできません。




5. キャスター角は常に有効ではない

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4. キャスター角の効果

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6. キングピンとスクラブ半径






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