小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2010/1: 初版
2017/11: 更新

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目次


 1. トルクと馬力
   1-1. はじめに
   1-2. トルク
   1-3. 馬力
   1-4. 基本のまとめ
   1-5. トルクとパワーの語源
   1-6. トルクアップの体感方法
   1-7. トルクと馬力は比べられない
   1-8. ドリルのトルクと回転数の関係


第1章:トルクと馬力


1-5. トルクとパワーの語源


突然ですが、雑学コーナーです。

たまに意味不明な言葉にぶつかって、いくら調べても良く分からない場合、その語源を辿るとその意味の本質がいとも簡単に分かる場合があります。

と言う訳で、早速トルクとパワー(馬力)の語源を調べてみましょう。

先ずトルク(torque)の語源ですが、元々はラテン語の捩(ね)じるの意味であるtorqueoから来ています。

ですので、その昔針金を捩じって作られていたネックレスの事をトルクと呼ばれていました。


トルクと呼ばれる針金を捩じって作られていたネックレス

なお、稀にクルマが直進方向に進む力をトルクと呼ぶ記事が見うけられますが、トルクとは捩じる力、すなわち回転方向の力を指しますので、明らかにそれは間違いです。

ついでに言うと、トルクが重い軽いと表現することがありますが、それも間違いです。

重い軽いは、重さを表現する形容詞ですので、トルク(力)の場合は大きい小さい、或いは強い弱いと表現するのが正しい日本語です。

もしどうしても重い軽いと表現したい場合は、回転方向の負荷が重い軽いとすれば大丈夫です。

次にパワー(Power)ですが、これも同じラテン語なのですが、どういう意味だと思われますでしょうか?

実は”できる”(be able)という意味なのです。

恐らくその昔は、あいつは仕事ができる奴だと言えば、多くの荷物を早く遠くに運べる人だったのに違いないでしょう。

この様にラテン語は技術用語や学術用語にしばしば用いられており、その語源を調べるとその言葉の本質が見えてきます。

ついでに言うと、真理は英語でtrueですが、元はやはりラテン語のtree(樹)から来ているのです。


true(真理)の語源はtree(樹)

さらに日本語の話をすると、”木”と”樹”の違いは、木は伐採した木材も含めるのに対して、樹は生きているものしか指しません

ですのでtrueの語源は、樹であって、木ではないと言えます。

ちょっとだけ賢くなった気がしませんか?


1-6. トルクアップの体感方法


今までは自転車を例に説明してきましたが、それではクルマにおけるトルクの体感方法についても、ここで述べておきましょう。

例えば自分でクルマを運転しているとして、アクセルを踏むと加速します。

この加速感がトルクであり、達した速度が馬力の結果になります。

すなわち、最高速を決めるのは馬力ですが、そこに到達する時間を決めるのはトルクなのです。


黄色のBMW M4(431PS/56.1kgf・m)と赤のLEXUS RC F(477PS/54kgf・m)のドラッグレースの模様

ですのでもし加速が重要なドラッグレースで優勝したいのならば、馬力よりトルクを重要視しなければなりません。

更にもし自分のクルマのトルクがアップした場合の体感方法ですが、ターボを付けたり燃料を変えたりせずに簡単に味わうことができます。

例えば一般道を走っていて、長めの下り坂に差し掛かったとします。


坂道に来るとクルマは加速する

そうすると、アクセルを踏み込まないでもクルマはゆっくり加速し始め、更にアクセルを踏むと平らな道より軽々と加速するのが体感できると思います。

これこそがまさにトルクアップの効果で、どんなに重いクルマであってもトルクが大きければ軽々と進める(加速できる)というのが実感できると思います。

これを逆に言うと、どんなに軽いクルマであっても、トルクが無ければ気持ち良く加速できないという訳です。


1-7. トルクと馬力は比べられない


さてこの章の最後に、どうしてもこれだけはお伝えしておかなければなりません。

後ほど本書において、”トルク重視のクルマ”と”馬力重視のクルマ”の比較を行ないますが、これは明らかに不正確な表現です。

 
トルク重視のピックアップトラックと馬力重視のスポーツカー

なぜならば前記しました様に、馬力=トルク×回転数ですので、もし回転数が一定であれば、トルクが上がれば馬力も自動的に上がりますので、比較する意味がありません。

同じ掛け算の式である総額=単価×個数を例にすると、総額が馬力で、トルクが単価で回転数が個数になります。

この場合、もし売れた個数が同じであれば、総額と単価のどちらが大事かなどとは誰も議論しません。

比較するのであれば、単価を重要視するか、個数を重要視するかです。

話をクルマに戻すと、比べるのでしたらトルク重視回転数重視かです。

ただし本書においては分かり易さを優先するため、”回転数重視”の代わりに、一般的に使われる”馬力重視”を使う事にさせて頂きます事ご容赦願います。


1-8. ドリルのトルクと回転数の関係


ここまで読んで頂けると、以下のトルクと回転数と馬力の関係について、何となく分かって頂けたのではないでしょうか?

馬力=トルク×回転数


すなわち、もし馬力が一緒ならば、トルクを上げれば回転数は下がり、トルクを下げれば回転数は上がるという事です。

という訳で、ここで少々クルマから離れて、トルクと回転数に関する面白い事をお伝えしたいと思います。

これから貴方はドリルを使って、鉄板に直径1mmと10mmの穴を開けようとしています。


直径1mmと10mmのドリル

使用するボール盤は、ベルトの位置を変えてドリルの回転速度を高/中/低速の3段階に調整できます。


回転数とトルクを3段階に変えられるボール盤

さて効率良く1mmと10mmの穴を開ける場合、ドリルの回転数を高/中/低速のどれに設定すれば良いでしょうか?

感覚的に考えると、細い1mmのドリルを高速で回転させると鉄板に合たった瞬間にポキッと折れそうな気がするので1mmのドリルは遅く、10mmのドリルは勢いを付けるために早く回した方が良い様にだと思いませんか?

逆です。

もし1mmのドリルを低速回転するとその分トルクが大きくなるため、少しでも鉄板に強く押し当てると簡単に折れてしまいます。

ですので高速回転にしてトルクを小さくしなければなりません。

またもし10mmのドリルを高速回転させるとトルクが小さくなるため、少しでも鉄板に強く押し当てると簡単に止まってしまい穴を開ける事ができません。

ですので低速回転にしてトルクをアップしなければなりません。

同じモーターの馬力(パワー)であっても、低速回転で高トルクにするか、高速回転で低トルクにするかで作業効率が全く違う事を分かって頂けたでしょうか?

これをクルマに当てはめると、最も力(フォース)を必要とする発進時はギアをLoに入れて、タイヤを低速回転で高トルクにし、比較的負荷の少ない高速走行時はギアをTOPに入れてタイヤを高速回転で低トルクにするという訳です。

これでトルクの馬力は違いはおおよそご理解頂いたと思いますが、もう少し詳しく知りたい方は、次にお進み下さい。

多少難しくなりますが、その分面白い話が盛り沢山です。




第1章: トルクと馬力の話 5~8

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第1章: トルクと馬力の話 1~4

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第2章: トルクとは

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